近年ではゲノム医療や遺伝子検査が進み、身近になりつつあります。5p‐は基本的に遺伝による疾患ではありませんが、これからの医療や情報の一つとして、私たちも色々と学んでいきたいものですね。
ここでは、医療の現場において染色体ならびに遺伝子による疾患をはじめとする多くの患者さんを診察し、現在では、「遺伝教育」の理解啓発にご尽力されていらっしゃる東京女子医科大学附属遺伝子医療センターの松尾真理先生に心温まるメッセージをいただきましたので、ご紹介いたします。
人はそれぞれ、その人らしい個性を持って、only oneの人として存在しています。しかし、親子では、似ているところがたくさんあります。親の「体質」が子どもに伝わることを「遺伝」といい、「顔立ち」、「病気のかかりやすさ」、「薬の効きやすさ」など、様々な体質が親から子どもに伝わります。
遺伝情報の本体は、細胞の「核」にある2万個の「遺伝子」をつくる「DNA」という化学物質です。「A・T・G・C」の4つの文字(塩基)の並びで、遺伝情報は決まります。
DNAは変化しやすく、同じヒトの遺伝情報でも個人によりたくさんの違いがあります。また遺伝子は、身体の機能や形態を作るための、“レシピ”と例えられることがあります。同じ料理のレシピでも、本により材料や手順が少しずつ違い、完成した料理の味が違うのと似ています。つまり、全く同じ遺伝情報を持つ人は原則的には存在せず、誰かと全く同じ人間はこの世には存在しないという事です。それぞれの人がその人らしい個性を持って、only oneの人として存在しています。一人一人が違っていて多様性があることは、生物学的にもとても大事なことです。
違いがあるという事は、誰かが正しくて誰かが間違っているということではありません。お互いがそれぞれの違いを認識しお互いの個性を尊重し、自分も自分以外の人もそれぞれにonly oneのとても大切な存在であることを、認めあうことが必要です。
このように多様性を受け入れることができる社会は、誰にとっても生きやすく、暮らしやすい社会となります。私は自分の得意なことを活かして、カモミールの会関係者のみなさんと一緒に、みんなが暮らしやすい社会作りを目指したいと思います。
2018年6月
東京女子医科大学病院
遺伝子医療センターゲノム診療科
特命担当教授 松尾 真理